都市計画

 伊達美徳さん(建築家)文・写真のWEB SITE「街と森を考える まちもり通信」の「伊達の眼鏡blog」の本日(11月11日)の項に
「建築家たちの新国立競技場デカ過ぎ論には肝心の都市計画問題が抜けている」
が発表されました。
http://datey.blogspot.jp/2013/11/856.htmlLink

 都市計画に関心を持つことの重要性が切々と訴えられています。
 以下にご紹介します。

 が、私はもっと根本的な問題として
・もともと無主のものであり、有限である土地が、日本では財産として扱われていること
・衣食住という生存の基礎の中でも、とりわけ重要な住が権利櫓して確立されていないこと
について、広範な社会的な認識の一致・基礎が必要だと考えています。

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建築家たちの新国立競技場デカ過ぎ論には肝心の都市計画問題が抜けている

オリンピック用に建て替える計画がある霞ヶ丘国立競技場について、先般、それがあまりにデカ過ぎて問題だと、100人ほどの建築家を主とする有識者たちが、文部省に申し入れをしたニュースを知った。
それはそれでよいのだが、都市計画に関心のあるわたしとしては、なにかが抜けていると思えてならない。

新国立競技場計画案が、あれがそれほどでかいのは、必要な機能を積み重ねていくとそうなったのだろう。(コンペ一等案)
そんな機能の施設は要る要らない議論はさておいて、計画する新競技場の建物の高さが70mという高さが重要な問題として指摘されていることについて、都市計画から考えてみよう。

ここで都市計画として高さ70mについて、その数値に合理性があるかどうかが問題であるが、それもさておいて、その高さを認めた都市計画手続きについて考えてみたのである。
そうしたら分ったことは、なんとまあ、都市計画ってのは内からも外からも、ほんとにバカにされているってことである。

あのデカさを法的に容認しているのは、地区計画という都市計画、しかもつい最近になって決めた地区計画なのだが、どうも、だれもご存じないらしい。
上記の申し入れされた有識者の方は、あれこれ言っても要するにそのデカさ問題を指摘されているのだが、デカさは高さが許容されているから可能なのである。

で、建築家たちの文科省に出した文書の中で、そのデカさ問題で引き合いに出している都市計画は、戦前の風致地区第1号という古証文である。
でも、実は戦前の風致地区第1号がかかっていたのは、この場所ではなかったことを、もしかしたらご存じないのかしら。

新国立競技場の設計コンペ募集要項が公開されたのは、2012年の7月である。このときその対象敷地のあたりには、都市計画の高度地区で20m、風致地区で15mまでの高さの建築が許容されていた。
しかるにコンペ募集要項には高さ70mまで建てて良いとする条件になっていた。つまり、新国立競技場のコンペの主催者は、これが都市計画法違反、建築基準法違反であることを承知で、コンペを実施したのだ。
ついでに言えば、計画敷地には会館や都営住宅もあれば、公園もあるので、そのままでは建てられないから、これも違反条項であるが、ここではさておく。

もちろん、コンペをするだけなら、それが文科省関連機関であろうとも、法違反条件下でも一向にかまわない。
問題は、架空の計画ではないのだから、コンペで決めたらそれを建てなければならないことだ。
2012年11月に、コンペは終わって高さ70mの建物が当選した。オリンピック誘致のためには、これを確実に建てる保証がいる。となると都市計画法違反のままというわけにはいかない。
それならば、この新国立競技場が建つように、都市計画のほうを変えればいいだろう、では再開発促進区の地区計画をかけると、一定条件下で高さや容積率の条件緩和ができる、と考えた。

東京都はその70m許容の地区計画をつくって、2013年2月に一般に公開して意見を募集、5月に都市計画審議会でその意見も検討のうえで原案の通りに承認、6月に都知事が決定した。
つまり、都市計画はコンペの後追いで、違反を違反でなくするようにしたのであった。この後追い決定がないと、あのデカいコンペ当選案は実現しない。
まあ、なんというおうか、要するに都市計画は無理やり建築計画に従わされたのであった。
70mという高さが都市計画として妥当かどうかは置き去りにされたらしい。そこが問題の中心なのに、都市計画は建築に追随するだけの馬鹿である、バカにされている。

というここまでの話は、公開されている資料から、わたしが勝手に推測した物事と手続きの順序なのである。
だが、もっと想像をたくましくすると、コンペ以前に裏で関係機関の間で取引して、この方向に動くように取り決めていたのだろうと思う。もちろん、更にその裏には都市計画コンサルタントの専門家たちが、案づくりの仕事をしたであろう。
ついでに言えば、70m許容のコンペ要綱案づくりも、建築や都市計画のコンサルタントが仕事をしたに違いない。昔々、わたしもそういう大コンペの裏方をやったことがあるから、よく分る。

さて、この公開されていた表向きの法的手続きが進む間に、都民、区民はどうしたのだろうか。今回の申し入れをした専門家の建築家たちの中の都民区民は、なにをしたのだろうか。
もしも都民や区民が、あるいは有識者建築家たちが、あのデカさに反対ならば、この「神宮外苑地区地区計画」という都市計画案を潰すべきであったのだ。
2012年2月に、この都市計画案が公開され、一般意見募集があったときに、これはデカ過ぎると有識者都民は反対意見書を出したのだろうか。公聴会で反対意見を公述したのだろうか。
まさか、その都市計画の手続きを知らなかった「有識者」ではあるまい。

だが、思うに、多分、建築家たちも、普通の都民たちも、そんなことは知らなかったのだろう。残念ながら、いまの日本では、都市計画とはそんな位置にあるのだ。
都市計画は身の回りから広い範囲まで、人々が暮らしている空間を良くも悪くも規定する重要な法的規範でありながら、それを決めるときは無関心なことが多くて、悪い計画もそのまま決まってしまい、決まってしまってから問題がわかって騒ぐという、まことに効率の悪いことになる。
戦後せっかく長い間かけて、都市計画法の手続きに公開する市民参加の手法をとりいれたのに、市民が生かしていないのが、残念至極である。

わたしがここでこのようなことを言うのは、かの有識者のおっしゃることに反対を唱えるとか(全面賛成ではないが)、都市計画決定権者(都知事)の肩をもつとかではない。
都市計画について、世の中が無関心あるいは無視していることに、まことに困惑し慨嘆しているのである。ついでに言えば、わたしはオリンピックには関心が全くない。

実は、わたしが住んでいる横浜市の都市計画審議会の委員を2年間やったことがあるのだが、そこであまりのずさんな審議とともに、市民のあまりの無関心に驚いた。
そのことはこちらにグダグダと書いたので、お読みいただきたい。
●参照「エッセイ版 あなたの街の都市計画はこんな会議で決めている」
https://sites.google.com/site/matimorig2x/essay-cityplanningLink

●その他参照なさると面白いページ
「842なぜ今頃になって建築家は新国立競技場の計画案に異議申し立てなのか」
http://datey.blogspot.jp/2013/10/842.htmlLink

【長屋談議】2020年東京オリンピック新国立競技場はモノスゴイもんだ
https://sites.google.com/site/dandysworldg/newnationalstadiumLink

神宮外苑地区地区計画
http://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/keikan01_001070.htmlLink

神宮外苑地区地区計画を決めた東京都都市計画審議会議事録(主に13ページ以降)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/keikaku/shingikai/pdf/giji201.pdfLink

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 その他、このblogには
「たった一人のキャンペーン 分譲共同住宅(名ばかりマンション)禁止運動
~そして一棟賃貸型共同住宅の勧め~」

のバナーがあり、マンション問題に関する筆者の主張に触れることもできます。

— posted by 神原 at 08:15 pm   commentComment [0]  pingTrackBack [0]

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